WBO世界スーパー・フェザー級王座決定戦 エマヌエル・ナバレッテ対リアム・ウィルソン

  • 2023/02/10

世界戦10連勝中 3階級制覇狙うナバレッテ
強豪を連破して勢いづくウィルソン

 スーパー・バンタム級とフェザー級で世界王者になっているエマヌエル・ナバレッテ(28=メキシコ)が、3階級制覇を狙ってオーストラリアのホープ、リアム・ウィルソン(26)と対戦する。10度の世界戦を含め10年間に31連勝中のナバレッテと、まだプロで12戦(11勝7KO1敗)しかしていないウィルソン。経験と実績に大差があり、オッズは12対1の大差でナバレッテ有利と出ている。

二転三転した王座決定戦

 試合展望の前に、まずは今回の試合が決まるまでの経緯を説明する必要があるだろう。
 昨年9月、WBC&WBO世界スーパー・フェザー級王者のシャクール・スティーブンソン(25=アメリカ)がロブソン・コンセイサン(34=ブラジル)との初防衛戦を前に計量で体重オーバー、王座を剥奪された。翌日に行われた試合でスティーブンソンが判定勝ちを収めたため両王座は空位のままとなった。
 これを受け今回のWBO王座決定戦が行われることになったわけだが、当初は2カードが候補に挙がった。WBO1位のアーチー・シャープ(27=イギリス)対3位のリアム・ウィルソン(26=オーストラリア)、WBO世界フェザー級王者のエマヌエル・ナバレッテ(28=メキシコ)対2位のオスカル・バルデス(32=メキシコ)だ。WBOは実績のあるナバレッテとバルデスに王座決定戦出場の機会を与え、シャープ対ウィルソンは挑戦者決定戦にまわることになった。この試合は1月28日に行われるジャーメル・チャーロ(アメリカ)対ティム・チュー(オーストラリア)の前座に組み込まれる予定だった。
 ところが、12月中旬になってバルデスが負傷、出場を辞退することに。それから2週間経たずに今度はチャーロの負傷によって1月28日のイベントそのものが中止になり、ウィルソンの次戦が宙に浮いてしまった。こうした経緯があって今回のナバレッテ対ウィルソンというカードが決まったわけだ。

ナバレッテ 1.8キロ増の影響はあるのか

 プロキャリア11年のナバレッテは37戦36勝(30KO)1敗の戦績が示すとおりの強打者で、特にチャンスを掴んでからの波状攻撃に定評がある。ディフェンスは堅固というわけではないが、まだ世界戦の舞台ではピンチらしい場面は皆無といえる。
 身長170センチ、リーチ183センチとスーパー・バンタム級、フェザー級では大柄といえたが、スーパー・フェザー級では平均よりも小柄な部類に入るかもしれない。現に今回対戦するウィルソンはリーチこそ178センチだが身長は176センチで、ナバレッテよりも6センチ大きい。制限体重も1.8キロ増える。これまでの戦闘スタイルがそのまま通用するのかどうか、あるいはリスクを抑えた戦い方にチェンジすることができるのか、ナバレッテが試されることになる。

ノイナイにKOで雪辱 上位に進出してきたウィルソン

 2018年6月にプロデビューしたウィルソンは9連勝(6KO)後にジョー・ノイナイ(フィリピン)の持つWBOアジアパシフィック スーパー・フェザー級王座に挑んだが、4度のダウンを喫して5回TKOで完敗した。しかし、8ヵ月後の再戦では2回KOで雪辱を果たしている。体重オーバーのノイナイが体調不良だった点を割り引かなければならないが、ダウンを奪った左フックは鮮やかだった。非凡な才能の一端を見せた試合といえる。これで世界ランク入りしたウィルソンは次戦でWBO8位のマティアス・ルエダ(アルゼンチン)と対戦。この試合も3対0の判定でものにしている。ノイナイ戦で脆さを露呈したものの、その後の2戦で勢いを増している印象だ。
 ノイナイとの初戦では左構えにスイッチする場面もあったウィルソンだが、再戦とルエダ戦は右構えで戦っており、長身から打ち下ろす右ストレート、ノイナイを倒した左フックが主武器といっていいだろう。反面、守りは不安を感じさせるもので、耐久力も疑問視される。自国を出て初の試合が世界戦という点も不安要素といえる。

ナバレッテの3階級制覇が濃厚

 伸び盛りのウィルソンを軽視することは危険だが、10度の世界戦を経験しているナバレッテと比較して総合的な戦力で見劣りすることは否めない。ウィルソンは序盤に得意の右ストレートをヒットして一気にけりをつけてしまうか、あるいは大きなダメージを与えてペースを握るかしないと苦しいだろう。警戒しながら様子をうかがう展開になった場合は徐々にナバレッテのプレッシャーに押されてしまいそうだ。その可能性は高いとみる。
 一方のナバレッテにしてもスーパー・バンタム級、フェザー級時代の戦い方やパワーがそのまま通用するかどうか、蓋を開けてみないと分からない部分がある。
 少なからず不確定な要素があるだけに予断は禁物だが、経験値を含む総合的な戦力で勝るナバレッテが三つめの世界王座を獲得しそうだ。

<最近のスーパー・フェザー級4団体王座の動き>

WBA
:ロジャー・グティエレス(ベネズエラ) ⇒ エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国) ※2022年8月に王座獲得
WBC
:オスカル・バルデス(メキシコ) ⇒ シャクール・スティーブンソン(アメリカ) ※2022年4月に獲得 ⇒ ※2022年9月に王座剥奪(体重超過)
IBF
:尾川堅一(帝拳) ⇒ ジョー・コルディナ(イギリス) ※2022年6月に獲得 ⇒ 王座返上 ⇒ シャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン) ※2022年11月に王座獲得
WBO
:シャクール・スティーブンソン(アメリカ) ※2022年9月に王座剥奪(体重超過)


<スーパー・フェザー級トップ戦線の現状>

WBA
:エクトル・ルイス・ガルシア(ドミニカ共和国)
WBC
:空位 ★決定戦 レイ・バルガス対オシャキー・フォスター
IBF
:シャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン)
WBO
:空位 ★決定戦 エマヌエル・ナバレッテ対リアム・ウィルソン

 別表のとおり、この1年の間に4団体の王座の持ち主がすべて変わっている。その事実だけを取ってみても、スーパー・フェザー級が混戦状態にあることが分かるだろう。2団体王者だったシャクール・スティーブンソン(25=アメリカ)が体重超過のため王座を剥奪されライト級に転向したことが響いているが、過ぎたことを残念がっても仕方ない。
 WBA王者のエクトル・ルイス・ガルシア(31=ドミニカ共和国)は元オリンピアンだけあってスキルに富んだ好選手だが、ライト級進出試合でジャーボンテイ・デービス(アメリカ)に9回TKO負けを喫したばかりで、再起まで少し時間を要することになりそうだ。20戦16勝(10KO)1敗3無効試合。
 IBF王座は昨年6月に尾川堅一(35=帝拳)からジョー・コルディナ(31=イギリス)に持ち主が変わったが、そのコルディナは負傷のため指名試合をこなせず王座を剥奪された。後継王者になったシャフカッツ・ラヒモフ(28=タジキスタン)は攻撃型のサウスポーだが、先の王座決定戦ではザルファ・バレット(29=イギリス)の右アッパーを浴びてダウンを喫するなど危なっかしい戦いぶりだった。劣勢を挽回して9回TKO勝ちを収めているように地力があることは間違いないが、評価が揺らいだことも事実だ。18戦17勝(14KO)1分。
 絶対王者が不在のなかフェザー級のWBO王者、エマヌエル・ナバレッテ(28=メキシコ)とWBC王者のレイ・バルガス(32=メキシコ)がスーパー・フェザー級に参入してくる。両者ともいきなり王座決定戦に出場するなど統括団体から優遇されている印象は拭えないが、ふたりを凌駕するだけの実力者がいない現実にも目を向けなければなるまい。こうしたなかナバレッテとバルガスが次戦でどんなパフォーマンスをみせ、どんな結果を出すか注目したい。
 バルガスとWBC王座を争うことになったオシャンキー・フォスター(29=アメリカ 21戦19勝11KO2敗)はスピードとパンチの切れが売りの長身選手で、2017年以降は9連勝(4KO)をマークしている。オッズは2対1でバルガス有利と出ているが、番狂わせが起こる可能性もある。
 このほか負傷のためにナバレッテ戦を辞退した元世界2階級制覇王者のオスカル・バルデス(32=メキシコ)、前IBF王者のコルディナ、元世界4階級制覇王者のレオ・サンタ・クルス(34=メキシコ)、元IBF王者の尾川堅一(35=帝拳)、前WBA王者のロジャー・グティエレス(27=ベネズエラ)らを含めた混戦状態は、しばらく続きそうだ。

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