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NBA16-17シーズン

NBAコラム

Vol.279 プレーオフ都市伝説、真相は?

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Getty Images

What’s up!? みなさんこんにちは佐々木クリスです。いよいよ東西カンファレンスファイナルまで進み、NBAファイナルもすぐそこまで来ています。ゴールラインが見えてくるとシーズンが終わってしまのか?と寂しさも感じてしまうのですが、このままクライマックスまでみなさんと一緒に楽しんでいけたらと思っています!そして今回はレギュラーシーズンとプレーオフの違いについて、ある数字に着目して見たいと思います。それではlet’s go!

1戦必勝、1つのルーズボール、リバウンドにかける熱い思い、激しくなる身体のぶつかり合い。バスケットボールにおける全ての局面で気迫がこもった白熱の展開になるのがプレーオフ。一瞬の気のゆるみも許されない駆け引きが毎試合我々を魅了してくれるが、レギュラーシーズンとの違いを語る上で良く引き合いに出される。試合の攻守の早さとも言えるだろうか、NBAの試合48分間に両チームが何回攻撃権を得たかを示すもの…それがペース。

プレーオフにおいて常々『1回、1回の攻撃がとても重要なのでゆっくりとしたハーフコートバスケットの展開になりペースが遅くなる。なので、ディフェンスが得意でスローペースを好むチームが優位』という事が言われてきた。しかし、本当にそう言えるのか、今回はそんなレギュラーシーズン、プレーオフのペースを比較、検証してみたい。

NBAを語る上で当たり前に言われてきた定説。気になり始めたのは数年前なのだが、まずNBAでは近年3ptシュートの絶対数が劇的に増加していると共に、レギュラーシーズン中における1試合のペースも20年前のリーグ平均と比較すると2016-17シーズンは10回も多く攻める増加となっている。

NBA.com/stats の公式で出ている96-97シーズンから抽出していくと年表は以下の通りだ。

1996-97 89.78 2003-04 92.69 2010-11 94.53
1997-98 92.96 2004-05 93.56 2011-12 93.75
1998-99 91.58 2005-06 92.9 2012-13 94.43
1999-00 95.67 2006-07 94.3 2013-14 96.33
2000-01 93.8 2007-08 94.8 2014-15 96.3
2001-02 93.33 2008-09 94.11 2015-16 98.08
2002-03 93.63 2009-10 95.1 2016-17 98.72


レギュラーシーズン中のペースの増加について考える上で、戦術的な事項を書き記す前に、いくつか過去のNBAのルール変更が大きく関わっている事実も見逃してはならない。

1999-00 ボールを保持し進行する選手への進行の自由を制限するハンドチェッキングの廃止 2001-02 フロントコートにボールを運ぶまでの猶予が10秒から8秒に短縮/イリーガル・ディフェンスの廃止(ZONE解禁)とディフェンス3秒の導入

90年代後半のNBAではスローテンポでロースコアゲームが続き、得点を取る、というバスケットボールの魅力を損なわない為にリーグが意図的にてこ入れした事は紛れもない事実で、バスケットボールが誕生してから“観られる”ことを意識しながら多くのルール変更をしてきた歴史とも合致する考え方だ。

振り返ってみれば記録的なトリプルダブル数の誕生はこの時NBAがリーグとして決断した事に端を発すると言えるかも知れない。さらに莫大な放映権料を受け取るリーグの長期的な視点を持った戦略は見事的中、今も世界中に多くの新しいファンを生み出し、古くからのファンも引きつけて離さない。

2007-08シーズンをひとつのピークとして一旦数字が下降気味になったのは、2008年にドック・リバースHCに率いられ優勝したボストン・セルティックスが実行したあるスペシャリストによるディフェンスの考え方がリーグに徐々に広まった結果と僕は観ている。 熱心なファンならお気づきと思うが、スペシャリストとはトム・シボドー現ミネソタ・ティンバーウルブスHC兼バスケットボール部門社長だ。やはりNBAを制すると、その時に活用された戦術は大きな影響力をもってリーグに広まると考えて良いだろう。全てが他チームでも上手くいく訳では当然ないものの、ここでは大きなインパクトがあった。

ルールにのっとりある傾向が確立されると、今度は逆の流れで試合を支配しようとする。全ては巡り巡っているという事は言うに及ばないはずだ。

その証拠に、また数年後からペースが増加する。今度は強固になったディフェンスを打ち崩す為には、守備陣が体勢と布陣が整うまでに早めに攻める事がカウンターとして見出されたからだろう。そこにアーリーオフェンスの中で3ptを狙う事も含まれ、2015-16シーズンにはNBAの全シュートのうち50%以上がシュートクロックの前半、最初の12秒以内に放たれるというパラダイムシフトが起きているのだ。

簡潔にまとめさせて頂いたが、ここまででレギュラーシーズンにおけるペースの変化とNBAの戦術にも及ぶ変化に関してご理解いただけたと思う。

ここからは本題のプレーオフだ。同じく年表にまとめてある。

1996-97 86.5 2003-04 91.67 2010-11 90.71
1997-98 88.6 2004-05 92.66 2011-12 91.41
1998-99 89.39 2005-06 91.45 2012-13 92.64
1999-00 90.22 2006-07 92.22 2013-14 93.05
2000-01 92.53 2007-08 90.9 2014-15 96.85
2001-02 92.58 2008-09 90.42 2015-16 95.33
2002-03 92.82 2009-10 92.2  


みなさんはどのように感じただろうか?因みに2016-17年は現時点で平均96.91のペースで戦われており、このまま行けば前年を上回る。当然プレーオフは対戦チーム同士の特徴に大きく左右される上、試合数も断然少ない。それでも20年間では確実に増加しており、RSと比例するように増加していることも興味深い。

RSとPOの差が最も大きかったのは99-00シーズンで5.45回の攻撃分ペースが遅くなっている。RSよりPOの方がペースが増加したのは20年間で2014-15シーズンの1回だけ。それも0.55回増と微増だ。20年間の平均ペースの下落は48分間で2.38回減と考えれば印象ほどでもないという数字ともとれる。 この傾向は現代のNBAではプレーオフを勝ち抜く為にもレギュラーシーズン同様一定のペースをもって戦う事が必要だと言う事だろう。当たり前だが、プレーオフに入ったからと言って2017年スタイルのチームが1997年のバスケスタイルに様変わりする訳ではないという事は間違いなさそうだ。

前回コラムで時代と共に変化を見せるサンアントニオ・スパーズに着目したが、ペースにも同様の事が見て取れる。19年間のプレーオフでは88.46のペースで戦いながらも2014年に優勝した頃までには94.78まで増加。この年はRSも97.07でリーグ12位のペースでシーズンを戦っており、むしろリーグ比では早くプレーしたシーズンだった事に驚く方もいるかも知れない。その後3シーズンではリーグの増加が顕著だっただけに順位は12位から17位、26位、27位と下降の一途だが、数字自体は97.07、95.93、95.72、96.41と96前後と当時の水準を維持している。

堅実さが印象として定着する彼らもまた時代を映す鏡なのかも知れない。いやむしろプレーオフ勝ち抜く為には堅実さとペースの両立が求められるほど今のNBAはハイレベルとも言えるだろう。試合の主導権を握るペース、その見えない攻防に注目するとプレーオフはさらに面白い。



佐々木クリス

佐々木クリス
1980年生まれ。
出身:NY
青山学院大学卒。大学時代にインカレ優勝経歴を持ち、2012年よりbjリーグ千葉ジェッツ、翌年は同リーグ東京サンレーヴスに所属。現役時代よりWOWOW NBA ONLINEナビゲーターとして、WOWOWのNBA放送では同時通訳、NBAファイナル現地レポートなどを担当。13-14シーズンよりNBAアナリストとして解説を務める。


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