初戦から半年の直接再戦
リナレスのスピードと技巧にアドバンテージ
このふたりは昨年9月、今回と同じ会場、イギリスのマンチェスター・アリーナで拳を交えた。WBC休養王者だったWBC暫定王者のホルヘ・リナレス(31=帝拳)が序盤で主導権を握ったが、WBA王者のアンソニー・クロラ(30=イギリス)が中盤に反撃、一進一退の白熱した試合になった。5回にはリナレスが左目上をカットして不穏なムードが漂ったが、6回には右を決めてクロラの膝を揺さぶった。9回までは再びWBA王者が優勢を印象づけたが、勝負どころの10回、11回、そして最終12回をリナレスが抑えて判定勝ちに繋げた。採点は115対114、117対111、115対113でジャッジ三者ともリナレスを支持した。これによりリナレスはWBA王座を獲得するとともにWBCから「ダイヤモンド王者」に認定された。激戦だった初戦を受け、すぐに両陣営は再戦交渉に入り、ちょうど半年でダイレクト・リマッチが実現することになった。
身長とリーチはリナレスが173センチ/175センチ、クロラが174センチ/170センチと大差はない。実際、初戦でもどちらかが相手の体格に戸惑うということもなかった。初戦は一見するとクロラが押しているようにも見えたが、有効打はリナレスの方が上回っており、それをジャッジはしっかりと見極めたわけだ。
ともに調整試合を挟むことなく対峙するため、初戦の戦い方に何をプラスするかが勝敗を分けるカギになりそうだ。リナレスは左ジャブと足で突き放すアウトボクシングもできるが、それはクロラの前進に勢いを与えることになる可能性があり、かえって危険かもしれない。ここは持ち前のスピードと足のさばき、右のカウンターやインサイドから突き上げるアッパーで迎え撃つ策の方が有効だろう。初戦では6回に右拳を痛めてフィニッシュに持ち込めなかったが、体調が万全ならば今回はチャンス後に一気に畳みかけてしまいそうだ。
クロラとすれば得意のボディブローでリナレスの動きを止めたいところであろう。相手をロープに追い立てて体を密着させる中近距離での戦いに持ち込んでリナレスの体力を削いでいきたいはずだ。初戦でもその策は半ば成功してはいたが、その先の有効打に繋げる機会が少なかったためジャッジの支持を取りつけることができなかった。よって前回以上に攻撃姿勢を強めてくる可能性が高そうだ。地元ファンの声援が背中を押すような展開に持ち込めれば雪辱と2冠がみえてくる。
総合力に大きな差はないが、スピード、ボクシングの幅、経験値、カウンターの巧さと強さで勝るリナレス有利は動かない。初戦のオッズは3対2でクロラ有利だったが、今回は7対4でリナレスがリードしている。ただし、リナレスは耐久面に不安を抱えるだけに、有利ではあるもののなお不確実な部分は残る。
Written by ボクシングライター原功
ライト級トップ戦線の現状
WBA :ホルヘ・リナレス(帝拳)
WBCダイヤモンド:ホルヘ・リナレス(帝拳)
WBC :マイキー・ガルシア(アメリカ)
IBF :ロバート・イースター(アメリカ)
WBO :テリー・フラナガン(イギリス)
15年7月にWBO王座を獲得したテリー・フラナガン(27=イギリス)が1年8ヵ月間に4度の防衛を果たし、安定した力をみせている。4月にはペトル・ペトロフ(33=ロシア)の挑戦を受けることになっている。その勝者が1位のフェリックス・ベルデホ(23=プエルトリコ)と対戦する予定だ
ホルヘ・リナレス(31=帝拳)は14年12月のWBC王座獲得から2年以上の在位ということになるが、右拳の負傷で1年近いブランクを経験。昨年9月、相手国での復帰戦でアンソニー・クロラ(30=イギリス)を下してWBA王者とWBCダイヤモンド王者に認定された。この間、WBCではデヤン・ズラティカニン(32=モンテネグロ)が王者になったが、今年1月、マイキー・ガルシア(29=アメリカ)に3回KO負け、トップの座を明け渡した。3階級制覇を成し遂げたガルシアは36戦全勝(30KO)の技巧派強打者で、今回のリナレス対クロラの勝者との対戦がWBCから義務づけられている。
IBFでは昨年9月、決定戦を制した26歳の長身パンチャー、ロバート・イースター(アメリカ)が戴冠を果たした。19戦全勝(14KO)の快進撃を続けており、V2戦では小柄なサウスポー、デニス・シャフィコフ(31=ロシア)の挑戦を受ける予定だ。
このほかイースターとシャフィコフに惜敗したリチャード・コメイ(30=ガーナ)、12年ロンドン五輪金メダリストのルーク・キャンベル(29=イギリス)らも挑戦の機会を狙っている。
TALE OF THE TAPE
リナレス | クロラ | |
生年月日/年齢 | 1985年8月22日/31歳 | 1986年11月16日/30歳 |
出身地 | バリナス(ベネズエラ) | マンチェスター(イギリス) |
アマチュア実績 | 161戦155勝6敗 | |
プロデビュー | 02年12月 | 06年10月 |
獲得王座 | WBCフェザー級 WBAスーパー・フェザー級 WBA、WBCライト級 |
WBAライト級 |
身長/リーチ | 173センチ/175センチ | 174センチ/170センチ |
戦績 | 44戦41勝(27KO)3敗 | 39戦31勝(13KO)5敗3分 |
KO率 | 約61% | 約33% |
戦闘タイプ | 右ボクサーファイター型 | 右ボクサーファイター型 |
ニックネーム | 「ゴールデンボーイ」 | 「ミリオンダラー」 |