無敗の元ライト級王者 VS 元4階級制覇王者
中近距離での打撃戦は必至
「パンテリータ(豹)」というニックネームを持つ元WBC世界ライト級王者のオマール・フィゲロア(27=アメリカ)と、4階級制覇の実績を持つ元世界王者、サウスポーのロバート・ゲレロ(34=アメリカ)が、ウェルター級トップ戦線残留をかけて拳を交える。
フィゲロアは08年6月にプロデビューした27歳で、9年間のプロ生活で27戦26勝(18KO)1分という戦績を残している。13年7月にはWBC世界ライト級暫定王座決定戦で荒川仁人(八王子中屋⇒ワタナベ)に判定勝ちを収め、その後、正王者に昇格。14年4月にはアマ時代の天敵、ジェリー・ベルモンテス(アメリカ)に判定勝ち、8月には指名挑戦者のダニエル・エストラーダ(メキシコ)に9回KO勝ちを収めて2度の防衛を果たした。その前後からライト級の体重を維持することが難しくなっていたため15年にはスーパー・ライト級に転向。のちに3階級制覇を果たすリッキー・バーンズ(イギリス)に判定勝ちを収めた。しかし、それでも体重コントロールに苦しみ、15年12月のアントニオ・デマルコ(メキシコ)戦では151ポンド(約68.4キロ)のスーパー・ウェルター級で戦ったほどだった(12回判定勝ち)。今回は、それ以来のリングとなる。
荒川戦やエストラーダ戦が示すようにフィゲロアは中近距離での打撃戦を好む攻撃的な選手で、機をみて構えを左にスイッチする器用さも持っている。反面、自身の被弾も決して少なくはない。
これに対し、ゲレロは01年4月にプロデビューした16年選手で、IBFのフェザー級、スーパー・フェザー級、WBAとWBOのライト級暫定王座、そしてWBCのウェルター級暫定王座を獲得した実績を持っている。世界戦だけでも12試合(8勝4KO3敗1無効試合)を経験しており、すでにベテランの域にある。ただ、サウスポーの技巧派として鳴らしたフェザー級やスーパー・フェザー級時代と比べると、近年は体力勝負の激闘型に変貌した感があり、リスキーな戦いが続いている。13年以降は6戦2勝4敗と不振で、世界戦に限ってみれば3連敗中だ。また、昨年8月には格下とみられた選手にも不覚をとり、現在は2連敗で追い込まれた状況といえる。
KO負けがなくタフネスにも定評のあるゲレロだが、2年前のキース・サーマン(アメリカ)戦では右アッパーを浴びてダウンを喫しており、激闘続きの疲弊も気になるところといえる。
身長とリーチはフィゲロアが171センチ/185センチ、ゲレロが175センチ/180センチと大差はなく、体格面はほぼ互角といっていいだろう。ともに中近距離での戦いを好むため、必然的に体をつけ合った状態でパンチの交換をすることになりそうだ。ふたりともアッパー系のパンチもあり、序盤からスリリングな展開になる可能性が高い。フィゲロアには1年半以上のブランクがあり試合勘の鈍りが懸念されるが、これさえ問題なければ有利といえる。オッズも17対7でフィゲロアを推している。
Written by ボクシングライター原功
ウェルター級トップ戦線の現状
WBA SC:キース・サーマン(アメリカ)
WBA :レイモント・ピーターソン(アメリカ)
WBC :キース・サーマン(アメリカ)
IBF :エロール・スペンス(アメリカ)
WBO :ジェフ・ホーン(オーストラリア)
この階級は今年に入って大きく変動した。WBAの正王者だったキース・サーマン(アメリカ)がWBC王者のダニー・ガルシア(アメリカ)に勝って2団体統一王者になり、WBAではスーパー王者に昇格。その1ヵ月前、ダビド・アバネシャン(ロシア)に勝ったレイモント・ピーターソン(アメリカ)がWBAの正王座についた。IBF王座は5月にケル・ブルック(イギリス)からサウスポーのエロール・スペンス(アメリカ)に持ち主が変わり、7月にはWBOでもジェフ・ホーン(オーストラリア)がマニー・パッキャオ(フィリピン)に番狂わせの判定勝ちを収めて新たなベルト保持者になった。33歳のピーターソン以外は20代(サーマン:28歳、スペンス:27歳、ホーン:29歳)で、まだまだ伸びしろのある選手がトップを占める状況になった。
38歳のパッキャオはともかく、追う立場になった31歳のブルック、29歳のガルシアらは老け込む年齢ではないだけに、もうひと暴れを期待したい。また、今年4月にアンドレ・ベルト(アメリカ)との元王者対決で9回TKO勝ちを収めた29歳の元IBF王者、ショーン・ポーター(アメリカ)も王者たちと同等の力量の持ち主といえる。5月に戦線復帰を果たした元WBC暫定世界スーパー・ライト級王者、ルーカス・マティセ(アルゼンチン)も王者や上位にとっては怖い存在だ。