無敗の若き王者アルバレス、3度目の防衛戦に臨む!
WBC世界S・ウェルター級タイトルマッチ
WBC世界S・ウェルター級チャンピオン
サウル・アルバレス
(メキシコ)
元IBF世界ウェルター級チャンピオン
カーミット・シントロン
(プエルトリコ)
21歳の昇竜王者 VS カリブの暗殺者
ともにKO率は70%超 KO決着は必至
アルバレスは2011年に著しい飛躍を遂げたトップ選手のひとりといっていいだろう。マシュー・ハットン(イギリス)との王座決定戦を制し20歳の若さで王座に駆け上ったのは、まだ3月のこと。その後、6月にライアン・ローズ(イギリス)を最終12回で仕留め、9月にはタフで鳴らすアルフォンソ・ゴメス(メキシコ)を6回でストップ。早くも今回が3度目の防衛戦となる。
アルバレスは39戦38勝(28KO)1分のレコードが示すとおりの強打者だが、最近は一発に頼ることなく試合を組み立て、そのうえで相手の隙を突いて攻略を狙うようになってきた。強さに巧さが加味されつつあるといえるだろう。すでに10ラウンド以上を13度も経験するなどスタミナも旺盛で、ペース配分も巧みだ。10年5月のホセ・ミゲール・コット(プエルトリコ)戦で左フックを被弾して腰を落としたことはあるものの、基本的な耐久力は平均以上にありそうだ。若さと地位からくる慢心さえなければ、さらに大物になるはずだ。そういった視点から見ると、今回の相手シントロンは現在のアルバレスの位置をチェックするには最適の挑戦者といえるかもしれない。
「ザ・キラー」(暗殺者)という物騒な異名を持つ32歳のシントロンは、元WBO(暫定)、IBF世界ウェルター級チャンピオンの肩書を持っている。やや幸運な面はあったものの、09年2月には当時のWBC世界S・ウェルター級チャンピオン、セルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)と引き分けたこともある。その後、10年5月のポール・ウィリアムス(アメリカ)戦でリングから落下して負傷するというアクシデントに見舞われ、14ヵ月のブランクを強いられてもいる。11年7月の復帰戦ではカルロス・モリナ(メキシコ)に10回判定負けを喫しているが、こうした点を割り引いて考えなければなるまい。
38戦33勝(28KO)4敗1分と、こちらも高いKO率を誇る。特に中間距離で持ち味を発揮するタイプといえる。やや振りは大きいが、上からも下からもスリー・クォーター気味に繰り出される左右はアルバレスも要注意だ。
しかし、伸びしろを残しながら昇竜の時期にあるアルバレスと、08年以降の8戦で4勝(1KO)3敗1分のシントロンとでは勢いに大きな差があるのは事実。賭け率も9対1でアルバレス有利と出ている。シントロンの強打は十分に警戒しなければならないが、アルバレスが序盤の入り方と距離の測定さえ間違えなければ問題はないとみる。スリリングな攻防は中盤あたりでヤマを迎える可能性が高そうだ。
Written by ボクシングライター原功
ミゲール・コット
S・ウェルター級トップ戦線の現状
WBAスーパー:ミゲール・コット(プエルトリコ)
WBA:オースティン・トラウト(アメリカ)
WBA暫定:アンソニー・マンディン(オーストラリア)
WBC:サウル・アルバレス(メキシコ)
IBF:コーネリアス・バンドレイジ(アメリカ)
WBO:サウルベック・バイサングロフ(ロシア)
実績では3階級制覇のミゲール・コット(プエルトリコ)が大きくリードしている。11年12月には宿敵アントニオ・マルガリート(メキシコ)に技術力の差を見せつけて雪辱したばかりだ。マジソン・スクエア・ガーデン(MSG)に2万人超の観衆を集めるなど、東海岸では貴重なタレントでもある。
これを追う一番手がサウル・アルバレス(メキシコ)だ。そして、そのアルバレスの兄リゴベルトから王座を奪ったオースティン・トラウト(アメリカ)も好調だ。コーネリアス・バンドレイジ(アメリカ)は年齢的に多くを望むことは酷であろうし、サウルベック・バイサングロフ(ロシア)はまだ試されていない部分が多い。
このクラスの特徴としてランカー陣の充実が挙げられるが、挑戦権を巡って世界ランカー同士の直接対決が下記のとおり予定されている。
★2月11日、ラスベガス:エリスランディ・ララ(キューバ)対ロナルド・ハーンズ(アメリカ)
★2月18日、アトランティックシティ:ポール・ウィリアムス(アメリカ)対石田順裕(グリーンツダ)
★3月24日、ヒューストン:ジェームス・カークランド(アメリカ)対カルロス・モリナ(メキシコ)
154ポンド(約69.8キロ)を上限とするスーパー・ウェルター級トップ戦線。2012年は熾烈な戦いが待っている。
WBO世界S・フェザー級王座決定戦
WBO世界S・フェザー級1位
エイドリアン・ブローナー
(アメリカ)
WBO世界S・フェザー級6位
ビセンテ・ロドリゲス
(アルゼンチン)
メイウェザーの再来 VS 南米の未知の強豪
22歳の俊才ブローナーが初の王座獲得か
当初、ブローナーはこの団体のベルト保持者リッキー・バーンズ(イギリス)に挑戦するはずだったが、バーンズが体重苦を理由に王座を返上、ライト級に転向してしまった。そのため今回の王座決定戦に出場することになったという経緯がある。
ブローナーはこの1年で一気に世界的知名度と実績をアップした選手といえる。11年3月に元世界王者ダニエル・ポンセ・デ・レオン(メキシコ)に10回判定勝ち。6月には世界上位ランカーのジェイソン・リッツォー(アメリカ)に衝撃的な初回TKO勝ちを収め、その名を世界に知らしめた。身長170センチ、リーチ180センチの右ボクサーファイターで、天性の勘やスピード、俊敏さは5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(アメリカ)を彷彿とさせるものがある。21戦全勝(17KO)の22歳。将来のスター候補生といえる。
一方のロドリゲスは37戦34勝(19KO)2敗1分の好戦績を残している26歳で、WBO6位に名を連ねている。世界的な実績という点ではブローナーに及ばないが、WBO中南米タイトルやアルゼンチンの国内タイトルなどを獲得したことがある。
ロドリゲスの実力が未知ではあるものの、ここはブローナーのスピードとパワーが上を行くと見るのが妥当だろう。若くてタレント性豊かな新チャンピオンが誕生しそうだ。
Written by ボクシングライター原功
WBCシルバー・S・バンタム級王座決定戦
元3階級制覇チャンピオン
フェルナンド・モンティエル
(メキシコ)
WBC世界S・バンタム級8位
ビクトル・テラサス
(メキシコ)
元3階級制覇王者 VS メキシコのバイキング
熾烈なS・バンタム級トップ戦線サバイバルマッチ
モンティエルは2011年2月にノニト・ドネア(フィリピン)に2回TKO負けを喫してWBC・WBO世界バンタム級王座を失ったが、再起後の2戦は序盤でTKO勝ち。早くも4つめの階級でベルトを狙う位置につけている。51戦46勝(36KO)3敗2分。
一方のテラサスはモンティエルよりも4歳若い28歳。11年1月には元世界王者ネオマール・セルメニョ(ベネズエラ)に12回判定勝ちを収め、一時はWBA1位に名を連ねていたこともある。今回の試合が決まったためWBAランキングからはカットされたが、その実力は侮れない。戦績は34戦31勝(18KO)2敗1分。
8対1の賭け率が示すとおり総合力で勝るモンティエル有利は動かないところ。モンティエルにとって不安なデータがあるとすれば基本的な骨格の差であろうか。フライ級上がりのモンティエルに対し、テラサスはデビュー当初からフェザー級を主戦場にしてきた選手という違いがあるのだ。テラサスも小柄のため数字上は大差がないはずだが、体そのものの力が違う可能性がある。その差をもモンティエルが技術と経験で埋めると見るが……。
Written by ボクシングライター原功