<生中継>エキサイトマッチスペシャル in ラスベガス −西岡利晃 海外防衛戦−
WBC世界S・バンタム級タイトルマッチ
WBC世界S・バンタム級チャンピオン
西岡利晃
(帝拳)
元2階級制覇チャンピオン
ラファエル・マルケス
(メキシコ)
円熟のV6王者 VS 元2階級制覇王者
西岡のスピードと左ストレートにアドバンテージ
「ニシオカという固有名詞で通用する選手になりたい。そのためにはラスベガスで存在感を示す試合をする必要があると思う。そのときの相手がラファエル・マルケスだったら最高ですね。考えただけでワクワクしますよ」
1年ほど前、西岡が描いていたワクワク構想である。まさに、そのときがやってきた。
「あのころがあったからこそ、いまの自分がいる」と振り返るように、西岡は2000年から04年にかけてウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)に4度挑んで2敗2分に終わっている。そこから再出発し、現在は15連勝(10KO)を記録している。もちろん08年9月の戴冠試合、そして6度の防衛戦を含んだ数字である。30歳を過ぎてからひと回りもふた回りも成長した稀有な選手といえよう。
西岡は生来のサウスポーで、右で相手を牽制あるいはコントロールしておいて繰り出す左ストレートを主武器とする。スピードと破壊力をともなった左は「モンスター・レフト」と称されるほど。現WBC世界フェザー級王者ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)は、この一発でリング中央付近からエプロンまで吹っ飛んだほどだ。強打の陰になって忘れられがちだが、前後左右の位置どりの巧みさも西岡のボクシングを支えているといえる。今回は攻撃型のマルケスが相手ということで、これまで以上に距離やポジショニングが重要視されることになるだろう。
挑戦者のマルケスは兄弟世界チャンピオンと知られる。2歳上の兄ファン・マヌエル・マルケスはフェザー級、S・フェザー級、ライト級の3階級制覇王者として世界的に有名で、11月12日(日本時間13日)には4階級制覇を狙ってマニー・パッキャオ(フィリピン)の持つWBO世界ウェルター級タイトルに挑戦することになっている。兄は攻防兼備の万能型だが、弟のラファエル・マルケスは気の強さを前面に押し出した攻撃型のスラッガーといえる。
戦績は46戦40勝(36KO)6敗。体重50キロ台の選手とは思えない高いKO率を誇る。倒すパンチも右ストレート、左フック、アッパーと幅広い。いずれもが硬質感のあるパンチだ。
その反面、ディフェンス面に課題がある。6敗のうち5度がKO(TKO)によるものであることからも分かるように、耐久面には疑問符がつく。勝つも負けるもKO、つまりは肉を切らせて骨を断つ典型的な選手といえるだろう。
世界戦は西岡が11戦、マルケスも12戦を経験しており、総合的なキャリアや力量は互角とみていいだろう。となると、当日のコンディションや相性、あるいは序盤の展開などが勝負を分けるポイントになる可能性も十分あるといえそうだ。
マルケスとの戦力比較に関して西岡は「パンチ力はイーブンとしてスピード、ディフェンス、足は僕の方が上」と分析している。そのうえで「僕の左は間違いなく入る」と断言している。
西岡がサウスポーの利点とスピードを生かして挑戦者をコントロール、そして決め手の左ストレート一閃――そんなシーンを期待したい。
TALE OF THE TAPE
西岡 | マルケス | |
---|---|---|
1976年7月25日/35歳 | 年齢 | 1975年3月25日/36歳 |
兵庫県加古川市 | 出身地 | メキシコシティ |
12戦10勝2敗 | アマチュア戦績 | 21戦全勝 |
94年12月 | プロデビュー | 95年9月 |
169センチ | 身長 | 165センチ |
174センチ | リーチ | 174センチ |
45戦38勝(24KO)4敗3分 | プロ戦績 | 46戦40勝(36KO)6敗 |
約84%/約53% | 勝率/KO率 | 約87%/約78% |
日本バンタム級 WBC S・バンタム級 |
主な獲得王座 | USBA全米バンタム級 IBFバンタム級 WBC S・バンタム級 |
11戦7勝(5KO)2敗2分 | 世界戦戦績 | 12戦9勝(7KO)3敗 |
左ボクサーファイター | 戦闘タイプ | 右ファイター |
★数字でみる両雄
★西岡は過去に9人のメキシカンと対戦し全勝(6KO)。世界戦ではV1(ガルシア)、V2(ゴンサレス)、V3(エルナンデス)をすべてKOで退けている。
★マルケスは最近の10年間でサウスポーの世界トップ選手と、のべ5度対戦して4勝(2KO)1敗。
01年10月:マーク・ジョンソン(アメリカ) ○10回判定
02年2月 :マーク・ジョンソン(アメリカ) ○8回TKO
03年2月 :ティム・オースチン(アメリカ) ○8回TKO
05年5月 :リカルド・バルガス(メキシコ) ○12回判定
10年11月:ファン・マヌエル・ロペス(プエルトリコ) ●8回終了TKO
★西岡は過去に日本国外で4戦全KO勝ちをマーク。そのうちの2KO勝ちはラスベガスで記録したもの。
★マルケスはラスベガスで8戦して7勝(7KO)1敗と、こちらも高い勝率を残している。唯一の敗北は昨年11月、当時のWBO世界フェザー級王者、サウスポーのファン・マヌエル・ロペス(プエルトリコ)に喫したもの(8回終了TKO負け)。
Written by ボクシングライター原功
リコ・ラモス
S・バンタム級トップ戦線
WBA:リコ・ラモス(アメリカ)
WBA暫定:ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)
WBC:西岡利晃(帝拳)
IBF:タカラニ・ヌドゥロブ(南アフリカ)
WBO:ホルへ・アルセ(メキシコ)
5人の王者の中では、この階級の実績においては西岡が頭ふたつ抜け出ている。4階級制覇のアルセは激闘の疲れがみえ、今後に多くを臨むのは酷というものだろう。
下田昭文(帝拳)を逆転KOで破ってWBA王座を奪ったラモスは20戦全勝(11KO)と負けなしの伸び盛りだ。暫定王者のリゴンドーは五輪2連覇の万能型サウスポー。この両者は12月にWBAの統一戦で拳を交えることが決まっている。
ランカー陣では今回の西岡の挑戦者ラファエル・マルケスが実績、実力ともトップだろう。長谷川穂積(真正)に挑戦したこともあるシンピウェ・ベチェカ(南アフリカ)、日本にも馴染み深いサーシャ・バクティン(ロシア)らが続く。
前WBO王者ウィルフレド・バスケス・ジュニア(プエルトリコ)、前WBA王者の下田の巻き返しにも期待したい。