紆余曲折のすえ決定したV20戦
ゴロフキンの強打が炸裂か

  • 2018/04/27

 もともとゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)は昨年9月に対戦して引き分けたサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)との再戦に臨む予定だったが、ドーピング検査で陽性反応が出たアルバレス陣営が試合を辞退したため、バーネス・マーティロスヤン(試合時32歳=アルメニア/アメリカ)と対戦することになった。10年8月にWBA暫定王座を獲得してから約8年、19度の防衛を果たしているゴロフキンが圧倒的に有利とみられてはいるが、「挑戦の話を聞いたとき、チャンスが来たと思ったので、すぐに『イエス』と返事をした。報酬など条件はどうでもいいこと」と話すマーティロスヤンの自信は不気味だ。
 ゴロフキンは38戦37勝(33KO)1分の戦績が示すとおりのハードパンチャーで、一時は歴代トップに並ぶ17連続KO防衛を含め8年間に23連続KO勝ちを収めるなど手がつけられない強さを誇った。腰を下ろした前傾姿勢でプレッシャーをかけ、じわじわと追い込みながら右ストレートや左フック、それにアッパーなども交えた攻撃でKOを量産したものだ。それぞれのパンチは角度やタイミングが絶妙で、そのうえ飛び抜けてパワフルときているから相手はたまったものではない。
 ただ、直近の3試合に限って見てみると快勝とは遠い内容が続いている。16年9月のケル・ブルック(31=イギリス)戦は相手の棄権によって5回TKO勝ちで王座を守ったが、2階級下のウェルター級王者のスピードに苦しめられ、4回までは互角の内容だった。昨年3月のダニエル・ジェイコブス(31=アメリカ)も厳しい試合だった。中盤までは快調だったものの終盤になってペースを落としてしまい、レギュラー王者の反撃にあい小差の判定勝ちに留まった。連続KOは23、連続KO防衛は17でストップ、「無敵神話に陰りが見えた」といわれたものだ。そして昨年9月のアルバレス戦は引き分けという結果に終わっている。加えて、この4月には36歳になった。こうしてみると近況は必ずしも芳しいものとはいえないが、それでもブルックの眼窩底を骨折させており、またジェイコブスからはダウンを奪っている。アルバレス戦も限りなく勝利に近い内容だったことを忘れてはなるまい。一時的な疲労なのか、それとも限界をみせ始めているのか、答えは今回のマーティロスヤン戦を含めた今後の試合で出るはずだ。
 この3月まではノーマーク状態だったマーティロスヤンは、黒海とカスピ海に挟まれた東ヨーロッパのアルメニア共和国で生まれ、4歳のときに家族ととともにアメリカ西海岸に移住した。元アマチュアボクサーだった父親のノリックの影響で7歳のときにボクシングを始め、04年アテネ五輪に18歳で出場するなどアマチュアで130戦120勝10敗の戦績を残している。五輪予選では、のちにプロで世界王者になるティモシー・ブラッドリー(アメリカ)やアンドレ・ベルト(アメリカ)ら格上を連破している。「ナイトメア(悪夢)」というニックネームは、相手陣営から「これは悪夢だ」といわれたことが由来になっているのだとか。ちなみにマーティロスヤンはアテネ五輪ではウェルター級2回戦で敗退している。ゴロフキンはミドル級で銀メダルを獲得しており、もしかしたら会場ですれ違っていた可能性もある。
 05年4月、トップランク社と契約を交わしてプロデビューし、地域王座を獲得するなどして世界戦線に割って入るまでになった。しかし、初の世界戦(WBOスーパー・ウェルター級王座決定戦)では長身サウスポーのデメトリアス・アンドレイド(アメリカ)に12回判定負け、ジャーメル・チャーロ(アメリカ)との世界ランカー対決で10回判定負け、そして2年前にはWBA世界スーパー・ウェルター級スーパー王者のエリスランディ・ララ(キューバ/アメリカ)にも12回判定負けと、大事なところで勝利を逃してきた。その後、ドン・キング・プロダクションズにプロモーターを変えるなどしたためブランクが続いているが、降って湧いた今回の大一番に選手生命をかけるはずだ。戦績は40戦36勝(21KO)3敗1分。
 マーティロスヤンは右のボクサーファイター型で、ガードをアゴの脇に置いた構えから左フックで飛び込んだり右を被せたりするかと思えば、相手を引き寄せて迎撃する場合もある。アンドレイドからダウンを奪ったようにタイミングのいい左のカウンターもある。ゴロフキンのような際立った攻撃力があるわけではないが、高い技術力を持った穴の少ない選手といえる。
 いつものようにゴロフキンがプレッシャーをかけ、マーティロスヤンが足をつかいながら迎え撃つ展開が予想される。マーティロスヤンが正面に立ち止まったり怯んでロープを背負ったりしたら、ゴロフキンは一気に攻め落としにかかるだろう。攻撃力で大きく勝る王者が前半から中盤で潰してしまうという見方が多いのは当然といえる。挑戦者が勝機を広げるためには、まずスピードのある左ジャブで王者の前進を躊躇させ、そこに速い右を被せておいて動くという展開に持ち込む必要がありそうだ。これは最近の3戦でブルックやジェイコブス、アルバレスが採った策でもある。3人ともベストの結果を出すには至らなかったが、攻略法としては有効だと考えられる。ただし、それを完遂することが至難であることも3人が示している。

<資料1>TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較

  • 名前

    ゴロフキン

    マーティロスヤン

  • 生年月日/年齢

    1982年4月8日/36歳

    1986年5月1日/32歳

  • 出身地

    カラガンダ(カザフスタン)

    アボヴィヤン(アルメニア)

  • アマチュア実績

    04年アテネ五輪ミドル級銀

    04年アテネ五輪ウェルター級出場

  • アマチュア戦績

    350戦345勝5敗(他説あり)

    130戦120勝10敗

  • プロデビュー

    06年5月

    05年4月

  • 獲得王座

    WBA、WBC、IBF世界ミドル級

  • プロ戦績

    38戦37勝(33KO)1分

    40戦36勝(21KO)3敗1分

  • KO率

    87%

    53%

  • 世界戦の戦績

    20戦19勝(18KO)1分

    2戦2敗

  • 身長/リーチ

    179センチ/178センチ

    182センチ/178センチ

  • ニックネーム

    「GGG(トリプル・ジー)」

    「ナイトメア(悪夢)」

  • 戦闘タイプ

    右ファイター型

    右ボクサーファイター型

<資料2>連続20度以上防衛した世界王者

(1)25度 ジョー・ルイス(アメリカ)  ヘビー級  1937年~1949年
(2)23度 ダリウス・ミハエルゾウスキー(ポーランド) Lヘビー級 1994年~2003年
(3)22度 リカルド・ロペス(メキシコ) ミニマム級 1991年~1998年
(4)21度 スベン・オットケ(ドイツ)  Sミドル級 1994年~2004年
   21度 ジョー・カルザゲ(イギリス) Sミドル級 1998年~2007年
(6)20度 バーナード・ホプキンス(アメリカ) ミドル級  1995年~2005年

ミドル級トップ戦線の現状

WBA SC :ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)
WBA   :村田諒太(帝拳)
WBC   :ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)
WBC 暫定:※ジャーマル・チャーロ対ウーゴ・センテノで決定戦
IBF   :ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)
WBO   :ビリー・ジョー・サンダース(イギリス)

 10年8月にWBAの暫定王座を獲得してから約8年、正規王者からスーパー王者に昇格し、WBC王座とIBF王座も獲得しながら通算19度の防衛を重ねてきたゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)が、このクラスの絶対的な王者といえる。しかし、最近の3戦は完勝とはほど遠い内容で、後ろ向きな表現を用いるならば辛勝という印象もある。歴戦の疲労に加えこの4月で36歳になったこともあり、総合的な力や勢いに陰りが見えてきたとしても不思議はない。
 トップ選手やその周囲は、こうした変化を敏感に察知する能力にも長けている。かつては上位選手からことごとく敬遠されてきたゴロフキンだが、ここにきて元2階級制覇王者のサウル・カネロ・アルバレス(27=メキシコ)、IBF1位のセルゲイ・デレビャンチェンコ(32=ロシア/ウクライナ)、さらにジャーマル・チャーロ(27=アメリカ)などから対戦申し込みを受けている状態だ。ゴロフキンは各団体から指名戦を課されており、交通整理が必要な状況といえる。このほかWBAレギュラー王者の村田諒太(32=帝拳)や6月にV4戦を予定しているWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(28=イギリス)、元WBA王者のダニエル・ジェイコブス(31=アメリカ)、さらに長身サウスポーのデメトリアス・アンドレイド(30=アメリカ)も対戦の機会を探っている。また、今回の挑戦権はバーネス・マーティロスヤン(32=アメリカ)がゲットしたが、一時は対戦候補として名前が挙がったゲイリー・オサリバン(33=アイルランド)もいる。
 現時点での総合評価はゴロフキンがトップでアルバレスが続くかたちだが、スピードとパンチ力のあるチャーロの存在は不気味だ。

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PG12指定劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
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R-15指定相当R-15指定に相当する場面があると思われるもの
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R15+指定相当R15+指定に相当する場面があると思われるもの
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