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【尾川堅一(帝拳)独占インタビュー】
KO率74% 強打の尾川が世界初挑戦
12月9日 ラスベガスでIBF世界S・フェザー級王座決定戦 2017.12.1

 前日本S・フェザー級王者、尾川堅一(29=帝拳)が12月9日(日本時間10日)、アメリカのネバダ州ラスベガス、マンダレイベイ・イベンツセンターでIBF(国際ボクシング連盟)同級王座決定戦に臨む。相手はIBFランキングで尾川のひとつ下、5位に名を連ねるテビン・ファーマー(27=アメリカ)。74パーセントのKO率を誇る強打者の尾川(23戦22勝17KO1敗)に対し、ファーマー(30戦25勝5KO4敗1分)はディフェンス力に長けた技巧派サウスポーだ。
尾川は父親の指導のもとで2歳のときに日本拳法を始め、大学卒業後にボクシングに転じた経歴を持つ。「ボクシングは殴り合う格闘技。防御が優れているといっても避け続けることは不可能だと思う。自分はずっと殴り続けるつもり。右を当てれば絶対に倒せるという自信がある」と言い切る。



2歳から日本拳法を習う 挫折を乗り越えて成長

 愛知県出身の尾川は、父親が日本拳法の道場を主宰していたため、ごく自然に拳法を始めたという。「胴着を着たまま寝てしまったこともあったらしいです。それから大学(明治大学)を卒業するまで20年、日本拳法を続けました」という。6歳のときと中学1年のときには全国制覇を成し遂げ、高校時代は無敗を誇った。大学では主将を務め、団体戦では95パーセント前後の勝率を残した。「そのころに自信がついて、ボクシングで力を試したいと思った」と明かす。
 10年4月にプロデビューし、翌11年度の全日本新人王に輝いた。日本ランキング入りも果たしたが、9戦目にアゴの骨を砕かれて5回TKO負けを喫した。そんな挫折を乗り越えて世界戦線に浮上してきた。



――小さいときから格闘技を続けているわけですが、尾川選手なりに追求しているものがあるのでしょうか。

尾川:いや、追求はないですね。気づいたときには格闘技をやっていたので、自分にはこれしかないと。やって当たり前という感覚ですね。でも、ボクシングを始めて日本一、世界一というものを初めて意識するようになりました。

――プロ9戦目で敗北を喫したときは、どんな心境でしたか。

尾川:負けた瞬間、頭が真っ白でした。ノーガードで殴っているところにカウンターをもらってしまったんです。ガードしろと言われてもできず、それでも勝つことができていたので「ボクシングってこんなものか」と思っていたところでした。あの負けがあったからこそ今の自分があると思っています。負けが人を強くするということを実感しました。あのときの気持ちや痛みを覚えているので、その痛み以上のものはないと思っています。

――ボクシングの奥深さを知ったわけですね。

尾川:そこはまだ分かりません。ボクシングは難しいし、まだまだ成長できる部分もあると思っています。たとえばジャブの打ち方や種類など、いまだに分からないことがありますから。でも、そういう点が自分の伸びしろでもあると思います。ただ、取り組む姿勢の大切さは教わりました。いい加減に取り組めばいい加減のまま終わるし、しっかりと向き合えばチャンスは必ずくると。

――今回の試合が決まったとき、周囲から激励の言葉をかけてもらいましたか。

尾川:「おめでとう」ではなく、「やっと決まったね」という言葉がほとんどでした。みんな待っていてくれたんだなと感じました。拳法のときからそうなんですが、自分が勝つことによって先輩や後輩などまわりの人たちが喜ぶ姿を見るのが嬉しいんです。プロになってからもそうです。自分のために戦いなよ、と言ってくれる人もいますが、それだとなぜだか頑張れないんですよね。誰かが喜ぶ姿を見るのが幸せなんです。家族ができてからは、子供たちが試合のDVDを見てはしゃいでいるので、それを見ているときが一番幸せですね。今回、玄関に置いてあった日本チャンピオンのベルトを返上したので、子供たちは悲しそうでした。だから「次に世界のベルトを持ってくるから」と約束したんです。

――さて、今回は東京以外で初の試合ということになりますが、不安な点はありますか。

尾川:コンディションや時差など、すべての点ですね。後楽園ホールの試合だと500人ぐらいが応援に来てくれるけれど、今回は1万人以上入る会場に(応援団は)20人ぐらいなので――もちろん、その声援は大きな力になりますが――完全アウェーのなかで戦うという不安はあります。あとは減量ですね。まったく違う環境で減量するわけですから。でも、海外での試合経験がある亀海(喜寛)選手などからアドバイスをいただくなど環境は整っているので、少しずつ不安は取り除かれてきています。

――亀海選手からは、どんなアドバイスを?

尾川:ラスベガスは乾燥がすごいと聞いています。湿気があった方が汗が出るんですが、最後は水分を控えて汗を出すことになるので。何があって何がないのか、分かる限りの情報は聞いて、準備して納得したうえで行った方がいいじゃないですか。

――アメリカのファンを取り込むためには、それなりの戦いが必要になってくると思います。

尾川:アメリカのファンを取り込もうという意識はないけれど、僕が勝つことでファン(観客)は熱狂すると思います。僕が勝つ=自然と会場の人たちは「オガワ」という名前を憶えてくれると思うので、意識せずともそうなるんだろうと思います。

「右が当たれば倒す自信がある」

――今回の相手、ファーマーについては、どんな印象を持っていますか。

尾川:避けるだけの選手、という感じです。僕が常に思っていることなんですが、もちろん避けることは大切なんですが、ボクシングは殴り合う格闘技であって避けるスポーツではないんですよね。だから避けてポイントになるという点は理解できない。殴って殴ってということを36分間(3分×12ラウンド)続ければ、相手は避け続けることは不可能だと思うし、どこかで手を出さなければならないので、そこまで(ファーマーの)スタイルを気にはしていません。避けるなら避けてください、自分はずっと殴り続けますよと。

――ディフェンス以外で気になる点はありますか。

尾川:全然ないですね。僕はどんどん自信を深めているんですが、逆にまわりが不安になって緊張していくのを感じて、ちょっと不思議な気分です。僕よりもまわりの人の方が研究してくれています(笑)。日本チャンピオンのときはタイトルを取って当たり前みたいな雰囲気がまわりにありましたが、世界となると何か違うんでしょうね。まわりからも変な緊張感を感じて、それが面白いですね(笑)。

――ファーマーはサウスポーです。左構えの相手に対する苦手意識はありませんか。

尾川:キャリアの三分の一ぐらいはサウスポーと戦っているので、苦手意識はないですね。特別に得意だとも思っていないけれど、(パンチの当たる距離が)半歩遠くなるので少し疲れるかなという程度です。それにサウスポーの内藤(律樹)選手と2回戦った経験が大きいですね。

――その内藤戦と似た戦いになりそうですか。

尾川:そう思っています。(ファーマーは)8割から9割はディフェンスを意識している選手ですよね。自分もそうですが、同じ割合で守りに徹していいと言われれば誰でもあれぐらいはできると思います。でも、そんな試合をしても面白くないし、そんなことをまわりも求めていないからやらないだけで。だから、特に(ファーマーのことを)すごいとは思いません。みんなは「巧い選手」というけれど、ただ単に攻撃しないだけだと自分は思っているので。

――尾川選手自身は自分のどこがストロング・ポイントだと思っていますか。

尾川:スピードですかね。まわりはパワーだと言いますが、一瞬のスピードに自信を持っているので、そこが一番のストロング・ポイントですね。

――では、自分でこだわっている点は?

尾川:右のパンチで仕留めたい、ということにはずっとこだわっています。最近は相手のレベルも上がってきているので右が当たらず、左でも倒すということはありますが。フックでもストレートでも、右の感触のあるパンチを当てられれば絶対に倒せる自信はあります。

――調整は順調ですね。

尾川:自分のなかでは納得した練習ができているし、世界戦が決まる前の9月ごろから準備は始めていたので、いつでも戦える体です。どこかを伸ばそうかという意識はないし、あとはコンディション調整だけですね。短いラウンドでも内容のあるスパーリングをするとか、自分を納得させて毎日を消化していくという段階です。

――現在のS・フェザー級は、WBOチャンピオンのワシル・ロマチェンコ(ウクライナ/アメリカ)やWBCチャンピオンのミゲール・ベルチェルト(メキシコ)ら強い選手が数多くいます。

尾川:三浦(隆司)さんが引退して、自分の番が来たなと感じています。先輩が負けた相手(ベルチェルト)に勝てば評価も一気に上がると思うし、そう考えると自分は運がいいなと思います。強い選手がたくさんいるなかで戦えるということは自分の評価を上げる最大のチャンスですから。今回、ファーマーに勝って次はデービス(前IBFチャンピオンのジャーボンテイ・デービス)と戦って勝ちたい。それがモチベーションにもなっているし、勝つ自信もあります。そうなればロマチェンコやベルチェルトなど強い相手との対戦の可能性が広がりますよね。強い選手がたくさんいるのでテンションが上がりますね。

――遠くに見据えている目標はありますか。

尾川:チャンピオンにこだわるというよりも大物選手と戦いたいし、自分がそういう選手になりたいです。自分の力を試したくてボクシングを始めたので、自分の強さの位置を確かめたいですね。強い人と戦って自分の実力を試したいという気持ちがすごくあります。

――そのためにも今回の試合は重要ですね。

尾川:こんなところで立ち止まってはいられない、という気持ちです。いまはベルトを取って当たり前という気持ちになっています。期待はプレッシャーにもなりますが、反面、力になる。今回は通過点だと思っています。勝ってIBFのベルトをコレクションとしてもらい、そこからやっとボクシング人生がスタートするというイメージです。自信満々です。

――あらためて意気込みを聞かせてください。

尾川:「尾川堅一」という名を残すためにボクシングをやっているので、負けたら何の意味もない。待ちに待った世界戦、応援してくれた人や日本のボクシングファンのために世界一という称号とベルトを持って日本に帰ってきます。

※尾川対ファーマーのIBF世界S・フェザー級王座決定戦は12月10日(日)、午後0時20分WOWOWメンバーズ・オンデマンドで先行ライブ配信。翌11日(月)夜9時からWOWOWライブ「エキサイトマッチ」で放送。ゲストには尾川選手の先輩である元WBC世界S・フェザー級チャンピオン三浦隆司(帝拳)が出演。





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