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体重の壁を越えたメキシコのスター対決
カネロ・アルバレス対チャベス・ジュニア 2017.05.1

 154ポンド(約69.8キロ)が体重上限のスーパー・ウェルター級でWBO(世界ボクシング機構)王座に君臨するサウル・カネロ・アルバレス(26)と、元WBC(世界ボクシング評議会)ミドル級(160ポンド≒72.5キロ以下)王者、フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(31)のメキシコのスター選手同士の対決が5月6日(日本時間7日)、アメリカのネバダ州ラスベガス、T-Mobileアリーナで行われる。現在、チャベス・ジュニアはスーパー・ミドル級(168ポンド≒76.2キロ以下)でWBC6位にランクされているように、直近の5試合は約76キロ以上で戦っている。本来ならば両者は2階級異なるわけだが、今回は両陣営の合意によって164.5ポンド(約74.6キロ)以下の契約体重で行われる。総合力ではアルバレスが上回っているが、体格差が勝負に大きな影響を及ぼす可能性もある。最高1500ドル(約16万3500円)をはじめ2万2000枚余のチケットが試合2ヵ月前に完売になるほどの注目ファイト。はたしてどんな歴史が刻まれるのだろうか。



体格差のある冒険マッチの数々

 130年ほど前までボクシングは体重無差別で行われていたが、公平を期すために階級制が採られるようになった。その結果、現在では最軽量のミニマム級(105ポンド≒約47.6キロ以下)から最重量のヘビー級(200ポンド≒90.7キロ以上)まで体重別に17クラスに細分化されている。
 それでも、ときとして体重の壁を超越したスター選手同士の冒険マッチが組まれることがある。古いところで有名なのは1909年のジャック・ジョンソン(アメリカ)対スタンリー・ケッチェル(アメリカ)の世界ヘビー級タイトルマッチであろう。4度目の防衛を狙うジョンソンは約93.2キロ、挑戦者の世界ミドル級王者、ケッチェルは約77.2キロ、体重差は16キロもあった。ケッチェルは12回にダウンを奪う健闘をみせたが、これで火がついたジョンソンが同じ回にダウンを奪い返し、ミドル級王者を退けている。
 1988年には、当時のスーパースター、シュガー・レイ・レナード(アメリカ)が2階級上のライト・ヘビー級(175ポンド≒79.3キロ以下)王者、ドニー・ラロン(カナダ)に挑んだ。空位のWBCスーパー・ミドル級王座の決定戦も兼ねた変則マッチだったため76.2キロ以下の体重で試合は行われた。体格で大きなハンデのあったレナードは4回にダウンを喫するなど苦戦を強いられたが、9回に2度のダウンを奪ってTKO勝ち。一気に2階級の王座を獲得し、史上初(当時)の5階級制覇を成し遂げた。
 21世紀に入ってからは階級を超えたスター選手同士の対決が増えた。最もファンを驚かせたのは08年12月のオスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)対マニー・パッキャオ(フィリピン)戦ではないだろうか。すでにミドル級まで上げて6階級制覇を成し遂げていたデラ・ホーヤと、前戦でWBCライト級(135ポンド≒61.2キロ以下)王座を獲得したばかりのパッキャオが拳を交えたのだ。過酷な減量を強いられたデラ・ホーヤが145ポンド(約65.7キロ)だったのに対し、パッキャオは増量したものの142ポンド(約64.4キロ)までしか上がらなかった。加えて身長差は13センチ、リーチ差は15センチもあった。体重制競技の根幹を揺るがすような仰天マッチメークだったが、試合ではパッキャオがスピードで圧倒、稀代のスーパースターを8回終了で棄権に追い込んだ。
 昨年5月、アルバレス自身が体格差のある試合を経験している。そのときのアルバレスはWBCミドル級王者で、挑戦者は元スーパー・ライト級(140ポンド≒63.5キロ以下)王者のアミール・カーン(イギリス)だった。当時のカーンはウェルター級で世界王座を狙っていたが、それでも両者の体格差は歴然だった。そのため試合は155ポンド(約70.3キロ)の契約体重で行われた。アルバレスは挑戦者のスピードに苦しんだが、6回に強烈な右を叩きつけてカーンを失神させた。
 その4ヵ月後、IBFウェルター級王者のケル・ブルック(イギリス)がゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)の持つミドル級王座に挑んだが、こちらも善戦はしたものの5回TKO負けを喫している。ちなみにブルックは試合後に眼窩低骨折が判明、手術を受けことになった。
 今年3月にはWBCクルーザー級王者のトニー・ベリュー(イギリス)が、元クルーザー級、ヘビー級王者のデビッド・ヘイ(イギリス)と対戦。5対1で不利とみられたベリューだが、体格のハンデを跳ね返して11回TKOで勝利を収めている。
 こうしたデータをみるかぎり、必ずしも体の大きな選手が絶対的に有利とはいえないことが分かる。基本的な力量に加え、その試合がどちら寄りの条件で行われたかという点にも注目する必要があるからだ。ただ、大まかな傾向として分かるのは、体格で勝る選手はそのアドバンテージを生かしてパワーで勝負する傾向が強く、小さい者はスピードで勝負するという点である。



身長で10センチ、リーチで6センチ勝るチャベス・ジュニア

 7月に27歳になるアルバレスと2月に31歳になったチャベス・ジュニアとの間には4歳半の年齢差があるが、プロでの試合数はアルバレスが50戦(48勝34KO1敗1分)、チャベス・ジュニアが54戦(50勝32KO2敗1分1無効試合)と差はない。アマチュアで46戦(44勝2敗 ※諸説あり)したあと15歳でプロの世界に飛び込んだアルバレス、アマチュア経験がないまま17歳でプロデビューしたチャベス・ジュニアとも、実戦で経験値を上げてきたタイプだ。
 この両者は07年〜08年ごろに対戦プランが持ち上がったことがあるが、ともに無敗の快進撃を続けている最中でもあり破談になった経緯がある。その後、11年3月にアルバレスがWBCスーパー・ウェルター級王座を獲得し、3ヵ月後にはチャベス・ジュニアが1階級上のWBCミドル級王座につくなど、ふたりは常に刺激し合うポジションにいた。体重だけでなく両者のパワーバランスが崩れ始めたのは12年からだ。チャベス・ジュニアがセルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)に敗れ、世界王座を失ったうえドーピング違反も発覚。1年のサスペンドを受けたのちに戦線復帰を果たしはしたが、約束の体重をつくれず契約体重を再三上げたすえ拙戦を演じ、15年4月にはライト・ヘビー級でアンドレイ・フォンファラ(ポーランド/アメリカ)にダウンを喫して9回終了TKO負け。すぐに再起を果たしたものの、その後は足を痛めて1年5ヵ月もブランクをつくってしまった。偉大な元世界3階級制覇王者の父親からも「やる気がないのなら引退すべき」と勧告されたほどだ。
 これに対し、アルバレスは13年9月にフロイド・メイウェザー(アメリカ)に敗れはしたが、以後は6連勝(4KO)を収めて復調を印象づけている。特に元世界ランカーのジェームス・カークランド(アメリカ)を3回KOで屠った試合、カーンを右一発で失神させた試合、昨年9月にリアム・スミス(イギリス)から3度のダウンを奪って9回KOで下した試合などは強いインパクトを残している。個々の戦力だけでなく勢いや充実度といった数字に表せない面でもライバルの上を行っている。こうしたことが裏づけになってオッズでも11対2の大差で支持を受けている。
 ただし、実際の勝負がオッズどおりになるかというとそれは分からない。164.5ポンド(約74.6キロ)という契約体重がどちらにどんなプラス、マイナスをもたらすか見当がつきかねるからだ。チャベスが13年以降の5戦で最も軽かったのは167.5ポンド(約75.9キロ)で、今回はそれよりもさらに3ポンド(約1.35キロ)の減量を強いられることになる。メキシコの高地キャンプで順調に調整していると伝えられるが、何度も契約破りの前例があるだけに計量をパスするまでは安心できない。
 一方のアルバレスは過去最重量が155ポンド(約70.3キロ)で、今回はそれよりも9.5ポンド(約4.3キロ)も重い体重にしなければならない。単に増量するだけならば問題はないが、これまでと同じ動きができるように仕上げなければならないのだから容易なことではない。仮に体重が同じだったとしても、身長175センチ/リーチ179センチのアルバレスに対し、チャベス・ジュニアは185センチ/185センチと基本的なサイズで大きく勝る。しかもチャベス・ジュニアは計量後のリバウンドが10キロ近いと伝えられるだけに、アルバレスが体格面で大きなハンデを背負っていることは確かだ。
 スピードで勝るアルバレスは適度に動きながら出入りし、右ストレートや左のボディブロー、近距離ではアッパーなどで攻めるものと思われる。順当ならばこれらのコンビネーションがチャベス・ジュニアにダメージを与え、中盤あたりで勝負が決するとみる。
これに対しチャベス・ジュニアは正攻法では分が悪いだけに、馬力を生かして相手の体力を奪う戦い方をしてくる可能性がある。打ってはクリンチ、あるいは上から覆いかぶさるなどしてアルバレスを消耗させて乱戦に引きずり込み、後半勝負に持ち込む策を練っているのではないだろうか。数多くの世界王者を育成してきたナチョ・べリスタイン・トレーナーがついているのも不気味だ。
 小がスピードで大を制するのか、それとも大が馬力で小を封じ込めるのか。メキシコのスター対決に要注目だ。



Written by ボクシングライター原功



◆◆◆WOWOW番組情報◆◆◆

★「生中継!エキサイトマッチ カネロ・アルバレスvsチャベス・ジュニア」
メキシコの2大スターが階級を超えて激突!
5月7日(日)午前11:00〜 [WOWOWライブ] ※生中継
スペシャルゲスト:上田晋也(くりぃむしちゅー)

164.5ポンド キャッチウェイト契約
サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)/2階級制覇王者 vs フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(メキシコ)/元WBC世界ミドル級チャンピオン
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