単独1位の18連続KO防衛狙う豪腕ゴロフキン
WBA王者ジェイコブスとニューヨークで対戦
2017.03.10
WBA(スーパー王者)、WBC、IBFの3団体から世界ミドル級王者として認定されているゲンナディ・ゴロフキン(34=カザフスタン)が18日(日本時間19日)、アメリカのニューヨーク、マディソン・スクエア・ガーデンでWBAレギュラー王者のダニエル・ジェイコブス(30=アメリカ)と拳を交える。7年前に戴冠を果たしてから史上最多タイの17連続KO防衛をマークしているゴロフキン(36戦全勝33KO)が記録を更新するのか、それとも4連続KO防衛を果たしているジェイコブス(33戦32勝29KO1敗)が番狂わせを起こすのか。世界的に注目度の高い試合が目前に迫っている。
ゴロフキンは10年8月にパナマで行われたWBA暫定王座決定戦に出場し、わずか58秒でKO勝ち、ベルトを獲得した。以後、別表のとおり7年間に17度の防衛をすべてKOで片づけてきた。これは77年から82年にかけてWBCスーパー・バンタム級王者のウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ)が樹立した17連続KO防衛に並ぶ記録である。ゴメスはアマチュア時代に世界選手権で優勝した実績も持ち、攻防兼備の名王者として歴史に名を刻んでいる。左フックを中心にした強打は軽量級ばなれしており、「バズーカ」の異名があったほどだ。V17後にスーパー・バンタム級王座を返上してフェザー級、スーパー・フェザー級でも王座を獲得、3階級制覇を成し遂げている。当時はロベルト・デュラン(パナマ)の10連続KO防衛を大きく上回ったこともあり、不滅の記録になるだろうと思われたものだ。事実、30年以上も破られなかったのだから、決して大げさな表現ではなかったといえる。
これに並んだのがゴロフキンである。ゴメスの時代の世界戦が15回戦制で認定団体がWBAとWBCの2団体だったのに対し、現在は12回戦制、IBFとWBOを加えた4団体であることなど選手を取り巻く状況が変化しているため一様には比較できないが、両者の17連続KO防衛がボクシング史において傑出した記録であることは間違いない。それは日本記録が具志堅用高氏の6連続KO防衛であることからも分かるだろう。
ゴロフキンの防衛の足跡をみると、出身国のカザフスタンでの凱旋試合は1度だけで、ほかはアメリカが9度、モナコが3度、パナマ、ドイツ、ウクライナ、イギリスと開催地が7ヵ国に散らばっている。相手に関しては、現役を含めた世界王者経験者が7人いる。この点ではゴメスの4ヵ国、5人をいずれも上回っている。
ゴロフキンがコンスタントに年間2度〜4度の世界戦をこなしている点にも注目したい。これは自身がダメージを残さず、大きなケガもなく戦っていることの証左といってもいいだろう。破格のパワーだけでなく、防御を含めたテクニックの面でも優れた選手であることが分かる。
そんなゴロフキンが拳を交えるジェイコブスも攻撃力に関しては決して引けを取ってはいない。相手の肩越しに打ち込む右ストレートと切れのある左フックは3団体王者と伍する破壊力を持っている。14年8月に獲得した王座は4連続KO防衛中で、これは現役の世界王者ではゴロフキンの17連続KO防衛、ヘビー級のデオンテイ・ワイルダー(アメリカ)の5連続KO防衛に続く3番目の記録でもある。今回、ジェイコブスがゴロフキンを倒して3団体王者になるようならば、この記録も受け継ぐことになる。
ただし、大舞台の経験値や耐久力などを含めた総合力ではゴロフキンが勝っており、予想では3団体王者が有利とみられている。オッズは6対1と出ている。ゴロフキンがプレッシャーをかけながら距離を詰め、硬質感のある右フック、さらに左フックやアッパーを上下に散らして仕留めるシーンが目に浮かぶ。その一方、ジェイコブスのスピードに戸惑っているところに右ストレート、左フックを浴びる可能性もある。いずれにしても序盤から目の離せない試合になるはずだ。
<相手・国籍> | <結果> | <試合地> |
---|---|---|
ミルトン・ヌニェス(コロンビア) | ○1回KO | @パナマ |
<WBA暫定世界ミドル級タイトル獲得 ※初防衛戦を前に正王者に昇格> | ||
(1) ニルソン・タピア(コロンビア) | ○3回KO | @カザフスタン |
(2) カシム・ウーマ(ウガンダ) | ○10回TKO | @パナマ |
(3) ラファン・サイモン(アメリカ) | ○1回KO | @ドイツ |
(4) 淵上誠(日本/八王子中屋) | ○3回TKO | @ウクライナ |
(5) グレゴルツ・プロクサ(ポーランド) | ○5回TKO | @アメリカ |
(6) ガブリエル・ロサド(アメリカ) | ○7回TKO | @アメリカ |
(7) 石田順裕(日本/グリーンツダ) | ○3回KO | @モナコ |
(8) マシュー・マックリン(イギリス) | ○3回KO | @アメリカ |
(9) カーティス・スティーブンス(アメリカ) | ○8回終了TKO | @アメリカ |
(10) オスマヌ・アダマ(ガーナ) | ○7回TKO | @モナコ |
(11) ダニエル・ギール(オーストラリア) | 〇3回TKO | @アメリカ |
(12) マルコ・アントニオ・ルビオ(メキシコ) | 〇2回KO | @アメリカ |
<WBC暫定世界ミドル級王座獲得 ※のちに正王者に昇格> | ||
(13) マーティン・マレー(イギリス) | 〇11回TKO | @モナコ |
(14) ウィリー・モンロー・ジュニア(アメリカ) | 〇6回TKO | @アメリカ |
(15) デビッド・レミュー(カナダ) | 〇8回TKO | @アメリカ |
<IBF世界ミドル級王座獲得> | ||
(16) ドミニク・ウェイド(アメリカ) | ○2回KO | @アメリカ |
(17) ケル・ブルック(イギリス) | 〇5回TKO | @イギリス |
<WBC、IBFのみの防衛戦> |
(1)17連続KO防衛 |
ウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ) ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン) |
(3)14連続KO防衛 | ダリウス・ミハエルゾウスキー(ポーランド) |
(4)10連続KO防衛 | ロベルト・デュラン(パナマ) ナジーム・ハメド(イギリス) |
(6) 9連続KO防衛 | ヘンリー・アームストロング(アメリカ) カルロス・サラテ(メキシコ) マイケル・モーラー(アメリカ) フェリックス・シュトルム(プエルトリコ) |
Written by ボクシングライター原功
ゲンナディ・ゴロフキン
ダニエル・ジェイコブス